いつの間にか1700兆(!)に乗せた家計の金融資産だが……

 週明けながら海の日の祝日である、今日の日経朝刊2面(総合・政治)の社説に「1700兆円の生かし方」として、15年3月末に初の1700兆超えを果たしたという家計の金融資産について、普段2本分の社説の全スペースを割いた論説があった。出所は日銀の資金循環統計といい、社説中ではその内訳が「現預金52%」としかなかったので、全部の内訳は日銀HPにでも載っていよう。近いうちに確認したい。

 しかしつい先だってまで「1000兆」だの、せいぜい「1200兆」くらいだと思っていた金融資産が1700兆にまで増えたのは、ひとえにアベノミクス&黒田バズーカーの成せる業、日経平均2万乗せに象徴される資産効果なのは疑いなかろう。ただ……

 「資金に余裕があれば、ハイリスク・ハイリターンの投資も有力な選択肢だろう」
 「デフレ時にこそ現預金が財産の目減り防止になったが、デフレ脱却が明確になれば個人の自己責任を大前提に、ハイリスク・ハイリターンの投資の動きも強まろう」

……といった論説はさすがに余計なお世話だ。昨今のアベノミクスやそれに基づく2度の黒田バズーカーは、当の政府・日銀は当然口にこそ出さないが、かつて四半世紀ほど前に三重野日銀による、バブル潰しを名目とした過度の金融引き締めの反省なり教訓からきている感がある。当時の公定歩合を2.5%から段階的に6%にまで引き上げ、バブルこそ消え去ったが、その後遺症で「20年以上を失った」、その轍を踏むまいというわけだ。

 今の金融当局が、バブル再発まで狙っているとまでは思えないものの、少なくとも過度な出口戦略、金融引き締めだけは未来永劫、絶対やるまいと誓っている風にだけは窺える。

 ただ、国債残高も1000兆超あり、ギリシャと違って日本でデフォルトの懸念が皆無なのは、その「1700兆」が拠り所になっていることを忘れてはなるまい。