東芝が富士フィルムにメディカル売却打診……だが他に狙うは数社。

 今日の読売朝刊1面トップと7面(経済)に、東芝が医療機器の製造・販売を手掛ける連結子会社東芝メディカルシステムズ(栃木大田原)を富士フィルムホールディングスに売却を打診していたと出ていた。折角の虎の子事業をも手放すほどの、昨今の東芝の「病状の悪化」といえ、21日発表の今後の再建策の中にも売却の方針だけは謳われていたが、こういう具体化のネタは読売の見事なスクープ(!)、朝日や毎日はもちろん日経にさえ出ていなかったから、とっていない産経や東京、日刊工業等々にも出ていなかったろう。

 一応富士フィルムに打診は始めたが、恐らく出資希望の数社による事実上の競争入札になろうという。東芝メディカルの主力事業はCT(Computed Tomography:コンピューター断層撮影装置)やMRI(Magnetic Resonance Imager:磁気共鳴画像装置)といった画像診断装置の製造・販売で、世界シェア推定4位、連結売上高4000億。東芝本体がメディカル株を100%握っていて非上場だが、50%以上の売却の方針で、売却額は数千億規模にのぼろうという。

 メディカル社を含むヘルスケア事業は、グループ内で唯一と言っていい黒字見込みの優良セクターだ。にもかかわらず手放すのは、24日の読売の取材曰く「東芝の中で縮小均衡に陥れば、メディカル社の従業員に不本意になる」と、経営悪化で自己資本比率も10%割れの中余力が乏しい上、東証でも今秋に特設注意市場銘柄なるものに指定され、公募増資等による資金調達も事実上許されていない状況で、あとは他社傘下に委ねるしか方策がなかったという。

 東芝メディカルを「狙う」は富士フィルムのみならず、我思うにまずはオリンパスかもしれない。オリンパスは僕的に高校時分等の若い頃を中心に(?)キヤノンニコン同様カメラメーカーのイメージがあり、ホームページによれば今もそのようだが、富士同様に内視鏡等のメディカル機器も手掛けると最近知った。しかしCTやMRIまでは手掛けていないようで、今頃は「欲しい!!入札で富士その他を蹴落としてでも絶対に欲しい!!」とでも思っているかもしれない。

 ただし、オリンパスオリンパスで4年前の11年に、旧山一証券同様の「飛ばし」の会計不祥事で危うく東証上場廃止の寸前にまで至ったことがあり、ここで名乗りを上げると口さがない向きに「不祥事者同士の売買か!?」とでも揶揄されかねない。もっともオリンパスは、今回の東芝の事情とは何ら無関係かつ別次元の話なので、勇気をもって入札の勝負に打って出るのも立派な経営判断だと思う。

 あとは、抜かれた今日の日経朝刊(?)7面(企業)左肩に出ていた、日本電産永守重信会長兼社長のインタビューで、16年の大型M&Aで電機セクターをメインターゲットにしたいとあった。そしてそこでも東芝の今年のことに触れた後、「国内の経営者が『不採算事業の処理』に没頭し始めようから、そこが狙いだ」とあった。

 確かに、だからといって日本電産も今回の入札に名乗り出るとまでは即断できないものの、可能性としては大いにあり得るとも思う。

 なお、今日のこのネタが材料になったか、東証東芝が前日29日比17.8円高(!)と3日続伸し249.9円、富士フィルムHDも3日続伸で130円高の5080円で引けた。東京MXTV『東京マーケットワイド』を終日見ていたが、両株共に読売のスクープが材料だとしていたので、明日の日経本紙や株式、日本証券の各紙も「一部報道で……」としつつ、そう書くと思う。