戦前と現在と共通点の多い「Visit Japan」。

 今日の日経産業新聞最終22面「眼光紙背」に、昨今の外国人来日者の急増は喜ばしく、過去には戦前にも丁度似た環境だったとあった。3年前刊行のJTB100年史……旧日本交通公社時代からの立派な社史だろうが、その中で1936年(昭和11年)の訪日客が4万2568人、外貨獲得ランキングで外客消費が1億0768万円と、綿織物、生糸、人絹織物の輸出に次ぐ4番目だったとのデータまであった。
 
 30年(昭和5年)には既に政府が国際観光局を置き、傘下だった現JTBが海外拠点を展開し営業に励んだという。そして34年(昭和9年)には恐慌の克服による世界経済の好転や、日本が金本位制から離脱したせいによる円安もあって、昭和初期の「Visit Japan」が10年も経たずに実を結んだ。しかしその後の第2次世界大戦、太平洋戦争勃発でブーム終焉、全部水泡に帰す……

 思えば当時は関東大震災や27年(昭和2年)の金融恐慌、29年(昭和4年)の世界恐慌を経て、国際収支も悪化した。そんな中で観光立国も目指そうとした過去は実に示唆に富む。第1次産業ばかりという貿易品目や金本位制云々こそ時代を感じさせるものの、昨今のリーマンショック東日本大震災を経て、前後して観光庁も発足させ、直近の円安水準という点はまさに歴史を繰り返している。なので唯一繰り返してはならないことと、テロとデング熱等の疫病の脅威さえなければ、昭和初期の先人達も喜んでくれるであろう観光立国になれる。