20世紀の大名人の弟子が名人挑戦だが……

 昨日大阪のJR環状線・福島駅前にある関西将棋会館で指された、A級順位戦プレーオフ第3局、久保利明九段VS行方尚史八段の1局で行方八段が勝ち名人初挑戦を決めた。昨日は夕方からニコニコ生中継を見ていて、対局開始から7〜8時間経ってもまだ序盤……先手の金無双、後手の平美濃という囲いが全く崩れていない、つまり双方まだ攻撃らしい攻撃を仕掛けていなかったのに驚いた。

 途中から見たので分からないが、双方初の名人挑戦がかかっていて、ここまで来たら負けられないと序盤から長考合戦、膠着状態だったのは想像に難くない。ゆくゆく朝日朝刊で観戦記を読むことになろうが、記者は盤側や控室に居てさぞかし鬼気迫る凄みを感じたろう。

 行方八段は大山康晴十五世名人最後の門下なので、もし名人奪取となれば実力制移行後の歴史で2組目の「師弟で名人」になる。前例が関根金次郎十三世名人−木村義雄十四世名人で、しかも師弟で永世名人だ(!)。

 ただ、一昨年も王位に挑戦したが1−4で敗れたところを見る限り、同じ相手羽生善治名人から奪取なるかは相当疑問だ。まず無理だという下馬評が大半だろう。

 競馬の世界なら、GⅠで王者を負かすGⅠ未勝利のダークホースが時折現れるが……ギャロップダイナ然り、ダイユウサク然り、レッツゴーターキン然り、ネーハイシーザー然り、サクラローレル然り、マイネルラヴ然り、エアジハード然り、ハーツクライ然り、マツリダゴッホ然り、ビートブラック然り……将棋は競馬ほど運が作用しにくく、現に僕的に「将棋の天皇賞」と勝手に思っている(?)名人戦での番狂わせは、実力制移行後皆無だからだ。

 それこそシンボリルドルフディープインパクトを足したような相手から(?)どうやって名人を取るのか、今回の七番勝負の焦点はそこなのだろうか??