選挙権くらい取得年齢引き下げを是とするか。

 今日の朝日朝刊1面トップと32面(社会)、読売朝刊4面(政治)に、今の通常国会で選挙権の取得年齢を18歳に引き下げる、公職選挙法改正案が可決・成立する見通しだと出ていた。昨日与野党6党が、昨年末の衆院解散に伴って一旦廃案になってしまった法案の再提出で合意したという。
 そして日経朝刊に何故出ていなかったのか不明だが(?)、今回は朝日が詳しく読売がベタだったので、晴れて(?)朝日を片手に綴る。

 6党の内訳は、自民、公明、民主、維新、次世代、新党改革だ。あと残る生活の党と山本太郎となかまたち、日本を元気にする会、無所属クラブは一旦態度保留でテイクアウトし、社民、共産は協議自体に加わっていない。事実上、社共は反対姿勢なのかもしれない一方、それら6党の共同提出であるからにはもう既に圧倒的賛成多数での可決・成立といえる。
 そしてタイムスケジュール的なものとして、6党は来夏の参院選からにしたい目標なので逆算し、5月のGW明けに成立、直後に公布、更にそこから1年後に施行の運びでOKと踏む。そうなるとその参院選時、18〜19歳の有権者延べ240万人が新たに「投票デビュー」の見通しだという。

 しかし不安な点が2つあり、まず昨晩のNHK『ニュース7』でもやっていたが、街中にいる高校生その他ハイティーンへのインタビューに、「政治がよく分からない」「何党何党……ってやたら多いせいかややこしい」という意見があることだ。中には逆に「今から楽しみだ」と、早く投票したいと言わんばかりのシッカリ者もいたが、18歳で選挙権を貰っても困惑する向きが多いのが現実だろう。

 これに関しては象徴的な討論番組があって、地上波でなしにCATVの日経CNBCだが、10年末にあった『経済闘論』でこんな提言があった。
 「今政治に何を求めているかっていうと、決めてくれよ……2つの政党にしてくれ……それは別にナントカ党ナントカ党、でなしに、『現状維持党』と『未来志向党』に分けてガラガラポンすれば分かりやすい。でないと、こうも政党が多いとワケが分からない……それも人々が政治から遠ざかる要因でもあろう」(コモンズ投信・渋沢健会長)

 かの渋沢栄一の孫の孫という御曹司だが(?)、現行の小選挙区制を敷いたのは、そういう2大政党に収斂させていくのも本来の目的だった筈なのだ。しかし確かに現状は全くの真逆で、こういうエグゼクティブですらそうなんだから、いわんや若者においておや、だ。

 もうひとつが、やはり買収に絡んでしまう懸念だ。今回の年齢引き下げは45年(昭和20年)の終戦直後以来か、ジャスト70年ぶりともいい、この間民法上の成人年齢引き下げ共々、実現ばかりか議論の俎上にのることすらなかなかなかった裏返しでもあるのは、そんな懸念が払拭できないからだったろう。

 もっとも今回のことは、国会で圧倒的数があるにしても僕的に賛成だ。32面に出ていた通り、成人年齢引き下げの民法改正は大いに懐疑的なので、まず選挙権の付与で大人の自覚を促す効果に期待したいのだ。
 イマドキのハイティーンの面々も「分からない」「ややこしい」というなら、それこそLINEばかりやっていないで即刻検索しまくる、そのためのスマホであってほしいものだ。僕らの時代は……と言い出すと歳取った証拠なのだが(?)、スマホはもとよりネット自体が全くなく、他人に訊く以外だと新聞・雑誌・書籍等のアナログメディアにあたるしかなかった。もちろんネット時代にあっても、それらを軽視し粗末にしてはならない。

 余談だが、もし僕の18の時に選挙権があったら、高卒早々にあの、現憲法下で80年(昭和55年)以来2度目となる衆参ダブルに投票できたのだ……86年(昭和61年)、参院選をにらんだ上で、中曽根首相が打って出た「死んだふり解散」によるダブル選で、当時の僕的争点は鉄男である立場上、ズバリ国鉄改革、分割・民営化の是非だった。
 まだ一党支配時代だった自民で、社会(現社民)・共産は「地方のローカル線切り捨てだ」とか何とかで反対、民社だったか社民連だったか「民営化のみ賛成」、公明は忘れた(?)。とにかく分割・民営化に賛成だったので「分からない」「ややこしい」どころか、誰に入れるか明白だったのだ。なお、当時は現行の小選挙区比例代表並立制でなしに中選挙区制、政党に直接入れる制度はなかった。
 かくして自民がダブルで圧勝、翌年の分割・民営化、JR発足に繋がっていく。それは目出たい一方で、今回の公選法改正を30年前に完了させてくれていたら、僕の投票デビューがいきなり衆参ダブルという快挙(?)だったかもしれず、悔やまれるのは悔やまれる。

 なので「分からない」「ややこしい」というなら、いっそ自分の趣味・嗜好から争点を見つけ、自分が実現してほしい政策を掲げる候補者なり政党(衆参の比例代表のみ)に投票するのもアリだ。そしておいおい政治・経済に関心を持っていけばよかろう。