米通貨当局の「太っ腹」か「やせ我慢」か……!?

 今日の日経朝刊9面(国際2)トップに、昨今の外為市場での円安ドル高基調に対し、米財務省FRBその他の通貨当局が表立った動きを見せず、事実上黙認を続けているという記事が出ていた。かつて1ドル70円台に突入しハイパー円高に見舞われ、政治問題にもなった日本と違って、米議会・政府には「石油製品の値下がり→エネルギー以外の消費拡大→成長率底上げ」といった読みがあり、むしろ歓迎ムードだという。それに米当局には、70年代後半に「双子の赤字」でドルへの信認が低下した苦いトラウマまであり、ふた昔前のクリントン政権以降、今日まで「強いドルは国益」が金科玉条の如く受け継がれているらしい。

 こう読む限りでは「じゃあ85年のプラザ合意は結局何だったんだ!?」「数年前の通貨安競争に参戦しようとしたのも何だったんだ!?」という疑問が湧くが、そこまでややこしい考察は今日のところは必要ないので触れないでおく(?)。それにしてもほんの数年前に、主要先進各国による通貨安競争でスパイラル的な通貨安の懸念があったことからすると、実に信じられない光景だ(?)。
 一方、目下のドル高に不満を抱くのが当然ながら輸出産業だ。とりわけ自動車のビッグスリーは、トヨタ等の日本メーカーの競争力が強まることに脅威を抱いている上、「ドル高は日本の通貨当局によって意図的に作り出された」という根強い見方まであるという。

 
 まあ輸出業界の不満は不満として受け止め、米通貨当局はその「三段論法」というか、将棋でいう「3手の読み」を頑なに信じているかのようだ。確かにもし「ドル高許さじ!」ということであれば、今秋の日本の「異次元緩和パートⅡ」の直後辺りに、NY連銀によるドル売り円買いの為替介入でもあった筈である。
 FRBにおいてもQE3の幕引きの際、ここまでのドル高を想定していたかどうか疑問なところはある。いずれにせよ、間もなく今年も終わり2015年が始まるから、米当局が本当に「太っ腹」なのか、内心は動揺していての「やせ我慢」なのか、まさに来年中の要注目点の一つではあろう。