経済問題の原点を探る『経済史を歩く』。

 今日の日経朝刊11面(日曜に考える)で、1面の3分の2のスペースを割いた大型コラム『経済史を歩く』がスタートし、第1回のテーマが昨年度709兆円もの残高に拡大し、今年度当初予算でも歳出の4割にあたる38.3兆円の新規発行額になった赤字国債である。
 財政法が制定された終戦直後の1947年(昭和22年)以降、日本の財政は国債発行ゼロでやってきたが、高度経済成長さなかの65年(昭和40年)のいわゆる「40年不況」で、遂に同法4条に基づいた特例国債発行に踏み切った。それが俗称・赤字国債で、当時の大蔵省主計局は「特例」だと歯止めが利きにくいとして、公共投資に充てる建設国債を主張したが、佐藤改造政権下で田中角栄の後任の蔵相に就いた福田赳夫が、社会資本拡充と減税の財源確保のため、政府・自民党の経済対策会議で不況打開策を打ち出したのと相俟って特例国債の強い意向を示した……これには福田蔵相なりのお手本があって、大蔵官僚だった27年(昭和2年)に起きた昭和恐慌を、国債発行で乗り切った時の蔵相・高橋是清の故事があったという。
 記事本文の更に末尾に、「どんな出来事にも出発点があり、それを辿ればウッカリ忘れていた面がクローズアップされてくる」とこのコラムの狙いが記されてあり、全く同感である。事件・事故での捜査でも、行き詰れば発生現場に戻る重要性があるし、僕なんかでも物事に行き詰れば過去を振り返ったり、時には帰郷して幼少時の思い出に浸るという「対策」を打つことがある。それは、とりもなおさず人生百般「原点に立ち返ること」に他ならない……
 ただ、次回のテーマが何と零細株主の僕の為にか(?)「新日鉄発足」で、これは40年超経た今も名高い話だけに新たなネタは皆無かもしれない。何しろ昨年1月に新日鉄株の買いを始めた頃にも触れたが、My参考文献が手元に少なくとも3冊ある……『メディアの興亡』(杉山隆男著・文藝春秋)、『小説日本興業銀行』(高杉良著・講談社文庫他)、『日本興業銀行七十五年史』で、かつて旧興銀(現みずほFG)が新日鉄発足前後のメインバンクだった関係もあり、これらだけで発足時の研究、なかんずく「原点回帰」は十分だろう(?)。もちろん、願わくば新日鉄社史でもあればなお良かろうが……。
 しかし新日鉄の原点といっても、合併前の旧八幡製鉄と旧富士製鉄にも触れたら、それらが戦後のGHQによる占領政策で分離される前身である日本製鉄にも触れ、更には20世紀初頭にできた官営八幡製鉄所にまで遡らなければならない筈で、とても3分の2面のスペースでは足りまい。末尾辺りで、当然のように今秋の住金との合併にも触れて締めるだろうから、そこを今日と同じスペースでどうまとめるか、も楽しみではある。