日経産業のページを前後しての“鉄鋼世界王者VS日本の高炉5社”(!)。

 今日の日経産業新聞13面(国際)トップに、昨日も決算のことで取り上げたアルセロール・ミタルが今期(今年12月期)の設備投資を、昨年の48億ドル(約3700億円)から1割ばかり削減し40〜45億ドルにするという記事が出ていた。前期はもともと50億ドル台前半を見積もっていたが、欧州問題のあおりでベルギーの高炉閉鎖を皮切りに、独、仏、ポーランド、スペインの設備稼働まで休止した結果、48億まで絞った経緯があるという。
 一方で、資源事業部門の営業利益が67%増の6億ドルと、好調なばかりか今やアルセロールの屋台骨と化している(?)ので、どうせならこちらに重点配分するという方針だ。実際の投資額までは出ていないが、鉄鉱石と石炭の生産で前期それぞれ5410万トン、830万トンと10年比で11%増、20%増で、今年は更に各10%増の計画があるという裏付けには基づく。
 記事の末尾で「そうした資源事業へのシフトが不可避」と結んでいたが、以上のことから「アルセロールは粗鋼生産量で大逃げを打っていたが、近い将来単独2番手追走の新日鉄住金に差し切られるか!?」「いや、今や屋台骨といってもあくまで資源事業はリスクヘッジ的存在。粗鋼生産で王者の座を譲るつもりもない」等々、どう捉えるべきかしばらく悩みながらの注目となろう。
 そしてページをめくると14面(自動車・素材・エネルギー)トップに、今度は新日鉄を筆頭に日本の高炉5社の今期粗鋼生産量が前期比5.6%減の見通しだとの記事も出ていた。やはり昨年来の、為替の対ドル・ユーロその他のハイパー円高が大きな重荷で、そこへウォン安の韓国が抱くポスコ等との輸出競争にも不利続きで如何ともし難かったようだ。唯一といっていい明るい兆しとしては、住金の「エース」シームレスパイプの生産・販売が、欧州問題の渦中にあっても当初計画の下方修正がないことだ。また、僕も貰った住金の有報にも出ていたが、昨年に米車輪メーカーをファンドから買収し、その効果が出始めているという。

 こうして、それとなく今日の日経産業紙上でも「鉄鋼世界王者VS日の丸鉄鋼」の趣があったが(!)、共通しているのは今期はもちろん少なくとも来期も、粗鋼生産量の上向きが見込めないことだろう。日本でも鉄鋼連盟がもう早くも、来期の粗鋼生産量を今期から更に若干減の1億500万トン行くか行かないか、辛うじて1億は乗せるだろうといったことを表明している。まあ大体、今回の記事になかったこととして推測するに、中国が在庫&生産調整もロクにやらずに何を血迷ってか(?)調子に乗って過剰生産してきたもので、世界的な“鉄鋼インフレ”がそう簡単に解消しそうにないという結論になるのだろう。