東京製鉄は自縄自縛だっただけでは……!?

 今日の日経朝刊15面(投資・財務)中ほどに、電炉最大手の東京製鉄が昨日発表した今年度上期中間決算の予想値で、単独最終損益が34億円の赤字になったと出ていた。従来予想はプラマイゼロで、前年同期が24億の赤だったので10億増えたことになる。昨今の円高で低価格の鋼材が流入して販価が下がったり、為替差損自体まで発生したようだという。
 しかし5ヵ月ほど前の5月24日に、僕は日経産業を引き合いに「東京製鉄の値下げが新日鉄等に痛手……!?」と題してこう綴っている。一応全文再掲したい。

…………今日の日経産業新聞15面(素材・エネルギー)左上にある囲み記事に、先週16日に鉄鋼の電炉セクター最大手・東京製鉄が鋼材の全面値下げを表明、これによってショックを受けたのは日本市場に安値攻勢をかける隣国・中韓メーカーではなく、むしろ新日鉄を筆頭とする日本の高炉セクターだと出ていた。その値下げは6月から全品1トン5千円の値幅で、東鉄曰く「先の大震災の復興が口実の、安い輸入品に対抗する」。
 4〜6月期の原材料価格で鉄鉱石と原料用石炭が史上最高値をマーク……直近10年の折れ線グラフも出ていてそれを見ると、1トンあたりそれぞれ約300ドル・200ドル弱で、01年に双方50ドルあったかなかったかだったので“隔世の感”がある。とにかくこれによって鋼材生産コストアップが1トン1万5千円となり、企業努力外の部分を価格転嫁せざるを得ないと模索していたところへ、東鉄がその足元を見透かして放った「東鉄ショック」だとしていた。
 その東鉄値下げの記事は確かに1週間前の17日付日経朝刊3面(総合)トップで見かけたが、あくまで「見かけた」に過ぎず「ああ、値下げするねんね」と軽い気で読み流していた(?)。しかし、まさかそれが新日鉄はじめ高炉セクターの新たな悩みのタネになっていようとは、迂闊なことに夢にも思わなかった…………

 「鋼材価格が下がった」以前に、「自ら価格を下げて」新日鉄等に真っ向勝負を挑んだはずだったのだ。値下げの決定は先の大震災の2ヵ月も後なので、震災の影響は言い訳にできない。単に自縄自縛に陥っただけなのを棚に上げて、「前年同期や従来予想より赤が増えた」と言われても、僕は全く関係ないからともかく、株主を中心としたステークホルダーが困るのだ(?)。