今日の日経朝刊の名物コラム『大機小機』を読んで。

 今年中にも中国のGDPが初めて、万年2位の日本を上回りその座を奪う見通しだが、そのことだけで「勝負がついた」(!?)と解釈するのは幾ら何でも早計だ。当然それは「負け惜しみ」でも何でもなく、1人当りのGDPではキッチリ人口に反比例し10分の1だし、第一中国の通貨人民元は未だロクに変動相場の荒波にさらされたことなどなく、元切り上げすら中国政府が渋りに渋って実質元安で甘えている有様ではないか。
 逆に日本円は1ドル=360円の固定相場から308円への切り上げ、そして原則自由放任の変動相場の荒波に打って出て、「3つのショック」(第1次・2次オイル、リーマン)や「2つの為替合意」(プラザ、ルーブル)等々「虐待」にも似た鍛えられ方を受けてきた。確かに中国は長らく共産主義経済で日本からすると市場経済としての年季に差があるし、人口や国土や文化等そういった国情も違うから、特に人民元の現状と今後について議論しようにも所詮暖簾に腕押しに終始するかもしれない。しかし中国が早晩人民元切り上げを経て、晴れて固定相場を卒業し変動相場の荒波をくぐり抜け、1人当りGDPをも日本を上回ったら、その時こそ清々しく「負け」を認め喜んで後塵を拝することに甘んじたい。
 今日の日経朝刊21面(マーケット総合2)の人気名物コラム『大機小機』はまさにそういったことに触れていて、殆ど僕のストライクゾーンに入ってくる絶妙な論調だった。そしてラストに芥川龍之介蜘蛛の糸』を引き合いに……日本が登ってきた糸に、下から中国等アジア各国も登ってきた。決して『蜘蛛の糸』の主人公のような愚かなことをせず、逆に手を差しのべてやる程の思いやりが「情けは人のためならず」ではないが、日本唯一の成長戦略につながると述べたかったようだ。