原油高が唯一の「インフレ懸念」(いや期待)か?

 一昨年7月、ニューヨーク原油(WTI)先物市場で史上初、1バレル147ドルまで高騰し、日本でもガソリンがリッター150円まではね上がり、トイレットペーパー売り切れ騒動は一切なかったものの、GSでの値上げ日前日に駆け込み給油が殺到した「第3次オイルショック」じみたこと(?)があった。案の定実需以上のバブル部分はすぐ弾け飛び、直後にリーマンショックの加勢もあってかWTIは40〜50ドルまで収束したが、昨今もいつの間にやら1バレル84〜85ドルまで、高騰までいかないにせよ上がってきている。これは本当に実需を伴っているのか、またぞろ一昨年の懲りない面々が引き起こしているかどうかのミニバブルなのだろうか……
 そんな中、今日の日経夕刊5面(マーケット総合)「商品スコープ」というコラムに、その辺の情勢がまとめられている。WTI価格と原油在庫の、それぞれ折れ線グラフと棒グラフも添えられてあり、丁度「オイルショック」後まるで入れ替わるように「リーマンショック」が発生、世界同時多発不況により1バレル40ドルを割り、在庫も09年前半には約3.8億バレルにまで上積みされてしまう。その後各国の、程度の差こそあれ不況克服の経済復興が進み、今年に入り在庫は依然ダブついているものの、更なる景気回復期待から主に投機資金が流れ込んでいるという。
 こうして記事を要約すると、我思う、やはりミニバブルではないか。しかしデフレに悩む日本経済に唯一、デフレ修正に貢献すると思うのがこの、先物主導というのが気に入らないにせよ原油高なのか…現に日本ではまたガソリン価格がリッター130円程度にまで上がっている。いや、そうではなく、デフレ修正でもましてやインフレでもない、これぞ最悪の「不況下の物価高」スタグフレーションになってしまうのか。
 ただ現物・先物の価格がいくら急騰急落しようと、オイルショックが今後何回起きようと、OPECを中心とした産油国等主に原油で食っている面々には申し訳ないが、備蓄を含めた原油在庫のダブつきそのものは歓迎すべきだ。所詮そういう天然資源を人類は作れないし、次世代に向けた何らかの代替エネルギーと、8日にも書いたスマートグリッドの実用化まで、原油枯渇の猶予が欲しいからだ。