自動車向けの「ハイテンVS炭素繊維」。

 今日の朝日朝刊9面(経済)トップに、新日鉄をはじめ鉄鋼高炉大手4社が自動車向けの「ハイテン」という鋼材の開発によって、炭素繊維でそのフィールドに参入せんとする東レ帝人等の繊維メーカーを迎撃するという記事が出ていた。ハイテンがHigh Tensile Strength Steel(高張力鋼板)の略称とあったが、頭文字なら「HTSS」のはずでハイテンとは呼べないので、1〜2言目の単語「High Ten〜」から取ったのだと解釈するほかあるまい。いずれにせよ薄くて強い鋼材で、一般に340メガパスカル以上の強度を誇る。
 新日鉄神鋼が5日、自動車鋼材としては世界最強度と言われる1180メガパスカルのハイテンが、再来年13年に日産自動車をユーザーとして供給すると発表。JFEスチールも5日、いすゞ自動車をユーザーに440メガのハイテンを発表し、そして住金もマツダを相手に、こちらは新日鉄神鋼以上の強度1800メガ(!)の新ハイテンが登場する。
 一方、「鋼材よりも強度は4倍、しかし重量1/10」を謳う炭素繊維メーカーである東レ帝人等も自動車市場への参入を狙っているが、迎撃する鉄鋼サイドも「鉄は1トン10万円が相場なのに、炭素繊維は文字通りケタ違いに高価。しばらく置き換わるまい」(新日鉄)と余裕綽々という。
 まあそうだといいが、逆にいうと繊維セクターにおいてその「ケタが違う分の」劇的なコスト削減が実現すれば、ハイテンが打ち負かされるということでもある。余裕は大事だが、油断だけはあってはなるまい。
 なお、強度の単位として出てきた(メガ)パスカルだが、そもそも圧力の単位で、日常では天気予報とりわけ台風(ハリケーン・サイクロン)でよくニュースにもなる「ヘクトパスカル(hPa)」が、かつての「ミリバール(mb)」から代わってもう何年になるか、今やすっかり定着した。なのでメガパスカルという場合、アルファベットの略だと「MPa」となるのかどうか、今の時点でわからない。一体どうなのか……!?