TOBによる更なるM&Aの促進と独禁法のレゾンデートル。

 今日の日経朝刊1面トップに、経済産業省が日本企業の業界再編を促すため、TOB(Take Over Bid:株式公開買い付け)コストを自社株で賄いやすくする特例を設ける法改正……産業活力再生法の改正案を来年11年の通常国会に提出し13年度に施行する方針との記事が出ていた。同法に沿って事業再編計画を国(当該業界の監督官庁?)に提出、認定を受けた企業が対象で、これによって多額の資金を別途用意しなくても、自社株買いによって眠っている総額約13兆円とも言われる金庫株(タンス預金ならぬタンス株?)の有効活用も図れる。これを民主党国民新党の現連立政権が掲げる新成長戦略「M&A(Merger & Acquisition:合併・買収)等の組織再編手続きの簡素化・多様化」の具体策第一弾に位置づけるという。
 現行制度でも自社株元手のTOBは可能だが、裁判所が選定する株式価格の評価を行なう検査役を置くとか、株式価値に関わるため総会での特別決議とかの必要が足かせになってTOBの邪魔になっているといい、改正産活法は被認定企業にそれらを免除するのが骨子のようだ。
 まあ背景にはただでさえ激化していく国際競争に加えて、今日も今日とてジワジワ進む円高…21時半時点で昨日比40銭ほど円高の1ドル84円40銭ラインといったこともあるのはわかる。国内競争にかまけているうちにいつの間にか海外勢に漁夫の利的にやられては、確かに泣くに泣けない。
 しかし手段がTOBであるなしに関わらずM&Aを推進するにあたって、良く言えば抑止力、悪く言えば障害として睨みをきかせているのが、独占禁止法であり公正取引委員会だ。もう、かつて1970年(昭和45年)に於ける八幡製鉄と富士製鉄の合併で新日本製鐵が発足した経緯を検証するまでもないこととして、しかし僕の考えが急進的過ぎるのか(?)記事ではそこまで触れられていなかったが、M&A計画中に「ここのシェアが独禁法規定オーバーかもしれずヤバイ」と気付いて公取委にお伺いをたて、もし八幡と富士の時と真逆でアウトの判定が出ればそれもそれで泣くに泣けまい。独禁法も時代の要請という大義名分によって、場合によっては歴史的な大々的改正も余儀なくされ、果ては存在意義の議論にまでなるのではないか。
 経産省がそこまで計算に入れ、ゆくゆくは公取委とバトルになりかねない事態まで想定しているか否かはわからないが、結局は公取委の方が時代の要請を受け入れる形になるのではないだろうか。