職場恋愛断念の後日談(11)…しおらしい彼女が僕にちょっぴり業を煮やした時 その3

 3つ目が、これは日記になく記憶も曖昧だが、同様に93年頃のことか、やはり昼休みにいつものように新聞……そうそう、それ以降は覚えている、日経本紙を読んでいる時だ(でもネタは忘れた!?……大方現在のマーケット総合面か……また4月22日と違って朝日と日経金融=現日経ヴェリタス=、更に毎日も読売も日経産業もどうしたかも忘れた!?)。彼女が遂にこんなことを言ってきたのだ。
 「その新聞って山崎浩子のこと出てます?」
 「……??(しばらく絶句の後おもむろに言った)いや……ああ、統一教会合同結婚式ね……」
 う〜ん、一体全体どういうつもりで訊いてきたのか……?確かに当時、桜田淳子山崎浩子のそういった話題が、ワイドショーや週刊誌とりわけ彼女が愛読していたかもしれない『週刊女性』だか『女性自身』だかはもちろん一切不明だが、賑わしてはいただろう。
 だが彼女が指指した相手は、仮にも1面右端に「日本経済新聞」という題号を1946年(昭和21年)3月1日以来それまで半世紀弱掲げてきた、つい前年に僕が書いた『私の愛読書』本編の“登場人物”しかも実質的主役である。普通は出ていないという先入観があって、そんなことは野暮というものだ。僕が大事なネタの検証中であるのを差し引いても、一瞬絶句した気持ちを誰かわかってくれないものか(!?)。
 確かにそれは彼女なりの、今更ながらの、遠回りながら精一杯のアプローチだったかもしれない。
 「山崎浩子合同結婚式…まで出てきてどうしてぇ〜!? もぅ〜山川さんったらホント鈍いっ!女殺しのフェミニストが女心もわかんないの!?」
 そんな風に思われたか(!?)……だったらなぜ今度は彼女から単刀直入に来ない?……僕は既に2年前の91年7月に2度アプローチし、事情を勘案しても同年秋の飲み会での一件が「致命傷」になったか、そこら辺りで事実上「この話」は終了したと思い込んでしまっている。そこへ、まるで北極南極にある冷え切った永久氷土を、呆気なく溶解させるが如き文字通りの熱意がなかったか。
 「(91年7月に断った天神祭の)あの時の埋め合わせをさせてくれませんか?」
 「埋め合わせって……?」
 そんな感じで持ちかけ、あとは千差万別、多種多様なシチュエーションが想定され、それこそ彼女次第だ。そこまでされたら、魚心あれば水心、僕とて適切に応対する術はあった。
 それより、僕がせっかく前年に「起死回生の一筆」を書いたんだから、内緒で日経新聞をとるなりスタンド等で買うなりして読みつつ、その時に僕を上回る話をぶつけてくる手もあったんじゃないか。それにも驚いて絶句するだろうが、同じ絶句でも中身も質もまるで違う。
 そもそも僕の『私の愛読書』をチャンと読んでくれていなかったのか…僕がどういう思いで綴ったのかをまるで汲み取ってもいなかったのか…その質問は、聞きようによっては日経新聞並びに僕の「思い」への冒涜に近い。
 こうして見ていくと、全くこの丸1年、一体何の“メディア”を読んで過ごしていたのか…?という話になってくる。
 それに前稿の東京遠征の話でもそうだが、なぜ思い切って「今度行く時は私も連れてって!」と直球勝負できなかったか…?