恋するふたり(?)を一緒に仕事させるおおらかさ。

 ウチの東芝系列の職場の資財管理部門で、もう四六時中といっていい程仲良く仕事するのみならず、どこへでも一緒について出かける一組の男女スタッフがいる。僕とは別の構内請負会社の方だが、まだ結婚にまで至らない様子であるものの、何だか時間の問題に見えてしまう(?)、微笑ましいばかりの光景である。いや、もしかしたらまたまた僕の事実誤認で(!?)、本人達は言わば単なる「ドラマ俳優を演じている」のが快感なだけ、全くその気はないのかもしれない。何れにしても、端から何も言わず仕掛けず、ただそっとしておきたいし、できればいつかきっと吉報だけでも聞かせてほしい。
 そして翻って思い起こしてみるに、僕の20年ほど前の松下電器(現パナソニック)で受けた仕打ちはというと……既述の通り確かに僕は安田成美か田中美奈子か篠ひろ子に似た美人の先輩に恋をした。しかしそれを察知するや否や、所属の持ち場を離したり、もちろん職場会やレク等も別々にし、もう何も打って出られないように仕向けた。確かに同期の中途入社の連中はもちろん、今もそうだが当時「フリーター」と呼ばれ、定職に就かずロクに新聞も読まずといった社会的見識ゼロの大多数の非正規雇用・派遣連中の馬鹿共もかなりいたから、とにかく連中を刺激させないよう就業中だけでも僕と彼女を分離させたかった意図なら話はわかる。当時の僕だってそんな程度は察していた。しかし、何故か年1回の旅行の際も行き来のバスまで別々にする徹底振りで、悲しいかなそうまでして一体何になるのかサッパリわからなかった。いや、最近のその「微笑ましい光景」を見るにつけ、ますます当時の妨害振りに対して意味不明に陥ってしまう。
 もっとも一般的に恋するふたり、また婚約・結婚にまで至ったふたりについて、絶対に「邪魔」しないことを不文律的条件に前述の理由も含めた上で「会社の中だけ」離してしまうというのは確かにわかる。それでも、辞めて15年以上経た今も釈然としないのは…?
 「山川如きに美人はダメだ」ということか…?ならば他の誰なら良かったのか…?一方、彼女が僕嫌いならともかく、もしも決してそうでもなかった場合、彼女のその密やかな心情にはキチンと配慮したのか…?そして苦難に喘ぎ、苦渋に満ち、四方八方闇に閉ざされた行路で一点の光明を発見せんと懸命な僕の姿がそんなに面白かったのか…?楽しかったのか…?
 もしそうなら次元は違うが、つまりウルトラシリーズや初期のセーラームーンシリーズを見ていて、ウルトラ戦士がカラータイマーが鳴るまでのピンチになったシーンあるいはタイマーが止まり絶命したシーンを見ても、また、セーラームーン以外の4戦士が全滅したシーンを見ても、後ろ指を指したり拍手喝采したりして大喜びするような人間しかいなかったのか、松下には…!? 「彼ら彼女ら」から正義と勇気と夢と愛と希望と平和…その他諸々の尊さをもらいながら、「感謝報恩の精神」どころかそれを仇で返して憚らない人間しかいなかったとでもいうのか、松下には…!?
 ただ唯一釈然とするのは、一体どちらが人間の尊厳を懸命に守るのか、いとも簡単に平気で傷つけるのかという企業グループということ……